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過酷な労働環境でも、定着率が高い理由【(株)喜久屋】第1回

取材・文/働きかた研究所 平田未緒
 
株式会社喜久屋 代表取締役
中畠 信一さん
 
◆社名 株式会社喜久屋
◆創業 1956年(法人設立 1966年)
◆資本金 1,000万円
◆売上高 11.5億円(平成25年度実績)
◆従業員数 150人(うちパート130人)
◆事業内容 クリーニング一般加工および衣類のリフォーム、ほか
◆本部所在地 東京都足立区保木間1-5-4
◆ホームページ http://www.kikuya-cl.co.jp/
 
「クリーニング工場で働きたい人なんて、いないと思っているんですよ」。
社長自らこう言い放つほど、過酷な労働環境である。
 
にもかかわらず株式会社喜久屋では、「うちの社員は、パートでも20年選手、30年選手がざら」というほどの高い定着を実現する。
ファッションのカジュアル化、クールビズの浸透など、クリーニングは需要自体が縮小傾向。
しかも「朝11時までに出せば即日仕上げ」「キャンペーン」「割引セール」など、スピート競争・価格競争も激しさを増すなかで、独自の路線を貫き安定した業績を維持している。
 なぜ、同社は強いのか。その、理由の大きな一つが「人」である。
代表取締役の中畠信一さんに、何を考え、どうしてきたのか、うかがった。
 

<< 目次 >>

第1回 クリーニング屋ではなく“喜久屋で”働きたい人づくり
第2回 愛 職場の改善と、トヨタ生産方式の導入
第3回 三方よしで、労働力確保・女性活躍を実現

 

クリーニング屋ではなく“喜久屋で”働きたい人づくり

 
「クリーニング工場で働きたい人なんて、そもそもいないと思っているんですよ」
 
東京都区内と埼玉・千葉県に店舗展開するクリーニング業、
株式会社喜久屋代表取締役の中畠信一さんは、開口一番、こう言った。
 
喜久屋店舗外観
 
130ある店舗のほとんどがフランチャイズ店であったり、
のれん分けにより直営でなくなっている同社にとって、クリーニング工場は正に経営の肝である。
 
その肝である工場が、それほど過酷な労働環境だということだ。
 
 
喜久屋の創業者は中畠さんの祖母。
その後法人化し、父が初代社長に就任した。
中畠さんは子どものころから、蒸気が立ち込める工場で、
終日の立ち仕事の厳しさを目の当りに、育ってきた。
一方でクリーニング業は、きわめて労働集約的な業態である。
十分な人材の確保なくして、経営は成り立たない。
 
 
では、どうするか。中畠さんが、考え、至った答えはこうだった。
 
 
「クリーニング屋ではなく“喜久屋で”働きたいと、思ってもらえるようにすればいい」
 
 

「男の職場」で女性比率90%、
「勤続20年、30年はざら」

 
以来、徹底して「自社で働きたい」と思ってもらえるための、努力と工夫を重ねてきた。
それも、従来「男の職場」とされてきたクリーニング業界にありながら、
先代社長の『これからは女性の時代だ』との考えから、早くも昭和40年代から、「女性が」働きたくなる職場を、追求した。
 
 
その結果、本部と直営店、そして工場で働く従業員150人のうち、今では約9割を女性が占める。
うち130人がパート、取締役を含む正社員が20人という構成だ。
雇用形態に関わらず、勤続年数は概して長く、パートでも勤続20年、30年は珍しくない。
 
 
正社員登用制度もあり、その後役員にまで昇格した2人は、いずれも50代の女性である。
うち1人は勤続27年。もう1人は16年となっている。
 
 
経営理念「喜久屋でよかった」を、お客さまだけでなく従業員に対しても、
実感させてきたと言っていいだろう。
実際のところ採用は、求職者や転職希望者に「喜久屋で働く」選択をしてもらわなければ、成り立たない。
 
一方、定着は、入社後も「喜久屋で働く」ことを選び続けてもらって初めて、実現する。
社長自ら「クリーニング工場で働きたい人なんて、そもそもいないと思っているんですよ」という業界にあって、なぜ、ここまでの定着・戦力化が図れているのか。
 
 

「愛」が伝わるから、定着・戦力化が実現する

 
 
「愛、なんですよ」
 
 
一瞬黙った後、中畠さんの口から、力強く発せられた言葉である。
要するに、自社で働く従業員の立場や気持ちをおもんばかり、「こうしてあげたい」「ああしてあげたい」、そして「共に良くなりたい」と思う気持ち。
それを、いかに具現化するか、ということだ。
中畠さんは、これを「働く人にとっての、喜久屋で働く価値を高める努力」と表現する。
 
 
具体的には、より安全で快適で疲れづらい職場づくりといったハードから、
本人の努力を認めて報いる評価に応じた賃金制度の導入や、
近年増えているシングルマザー世帯や小さな子供がいる母親でも働ける「オーダーメイド制シフト」、「工場内託児所」制度など。
 
 
賃金は「愛」の重要な表現手段の一つだが、それ以外の多様な施策が、「愛」として喜久屋のそこここに表れる。
こうした一つひとつを通じ、従業員に対する「愛」が、働く人一人ひとりに確実に伝わっている。
 
 
 
だから皆が、ここで働きたい、働き続けたいと思うのだ。
その結果、強いロイヤリティが従業員に自然に生まれている。
 
 
中畠さんの以下の言葉は、その証と言っていいだろう。
 
 
「なんでしょうねえ。社員、従業員がみんな、喜久屋が好きだ好きだと言ってくれるんです。
あと、喜久屋に集う人たちがとても仲がいいのだと思います。
私も、パートさん一人ひとりに、積極的に声をかけます。
それも、家族のこととか、けっこうプライベートなことにも触れますね」
 
 
会社を信頼しているから、愛され守られていると感じるから、不安なく安心して、仕事に専念していける。
会社の方針に従って、100%の力を発揮する。
定着・戦力化はこの結果であり、原因だ。両者は因果し相関している。
 
 
 

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