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働き方コラム

過酷な労働環境でも、定着率が高い理由【(株)喜久屋】第2回

愛 その1
職場の改善と、トヨタ生産方式の導入

 
中畠さんの「愛」を、具体的に見ていこう。
「働く人に、当社を選んでもらうには、まずはハード面での工夫が必要でした。
先代社長の『これからは女性の時代である』という考えから、昭和40年代、
つまり1965年ごろから、女性を積極的に雇用しようとしてきましたが、
それには機械の入れ替えからはじめなければならなかったのです」
 
仕事風景
 
 
例えばアイロン作業は、「男性の職人にしかできない」というのが常識だったところ、女性でも担当できるように特別な機械を開発した。
配送用の車も、ギアチェンジを苦手とする女性が多いことから、全車両をいち早く「オートマチック車」に入れ替えた。
 
 
なかでも多額の投資を必要とし、一方効果も絶大だったのが、作業の平準化、ジャストインタイムの生産等「トヨタ生産方式」の導入だ。
「クリーニング業界は、繁閑差がきわめて大きい業界です。
衣替えシーズンにあたる、春と秋の季節的な大きな山。
そして、土曜日、日曜日に店舗での受付量が急増することによる小さな山が、毎週毎週繰り返されます。
 
 
これに何の工夫もなく、ただ受動的に対応していれば、
繁忙期に合わせた工場設備は閑散期にはホコリをかぶってしまいます。
必要な労働力量も、日により季節によって、大きく変動することになります」
繁忙期に不慣れな短期アルバイトを雇用したり、無理な残業を強いれば、
生産性が下がり品質も低下してしまう。もちろん、無理が続けば、働く意欲も失せるだろう。
 
 
一方、閑散期に仕事がなく、パート収入が大きく目減りしてしまうのも、
「安定的に収入を得たい」主婦を中心とした女性パートにとって、望ましくないことだった。
 
 
「トヨタ生産方式を取り入れたクリーニング工程の仕組み化は、これらの課題を一挙にクリアするものでした。働く人に過度な負担がかからず、安定的に働いてもらえ、会社にとってはロスがなく、かつお客さまにはより安価に高品質なクリーニングをお届けできる、まさに“三方よし”を実現することができたのです」
 
 

愛 その2
評価と役割に応じた賃金で、適切に報いる

 
とはいえトヨタ生産方式の導入には、金銭的な投資とは別の大きなハードルがあった。
工場における仕事の内容や進め方が、従来とは劇的に変わることになったのだ。
 
 
「これまでは、一つの機械に一人がべったり張り付いて作業するイメージでした。
ところが新しいシステムでは、人が絶えず移動して、空いている機械で作業するように変わったのです。
これがスムーズにできなければ、小ロット小生産の効果は生じません。
つまり、年齢を重ねたベテランの方にも、新しい機械、それもいろいろな機械の使い方を覚えてもらい、工場内をスムーズに動き回ってもらう必要がありました。
これには、相当な努力が必要だったと思いますが、でも、皆さん、本当に気持ちよく頑張ってくれました」
 
 
そうした努力や結束が得られた理由に、「喜久屋が好き」という職場の風土、会社への信頼があったことは間違いない。
加えて「頑張った人」「大きな役割を果たしてくれる人に報いる」仕組みも当然、作用した。
 
 
「当社ではパートさんに、評価に応じた賃金制度を導入しています。
同じ工場でも、扱う機会や仕事は多岐にわたるので、〇〇の機械が使えるようになったら、✕✕の仕事ができるようになったら、号俸が一つ上がる、といった仕組みにしています。
一人の人が、多くの仕事ができるほど、人の配置に柔軟性が出て、
シフトが組みやすくなり、無駄もでません。そこを、きっちり評価しているのです」
 
 
さらに、パートをリーダー等の役職にも、積極的に登用する。
例えば課長は10万円まで、主任は5万円までのクレームを決済できる。
工場における持ち場ごとのリーダーは、ラインのマネジャーとしてシフトを組み、構成メンバーとのコミュニケーションに努めることで、すべての仕事が円滑に進むように段取りする。
「シフト組みは、単に時間合わせをすればよいのではありません。
人によって『できる仕事』『扱える機械』が違うため、立体的な思考が必要な、とても複雑な作業です」
 
しかも、必要な人員体制がとれなければ、
作業効率に大きな支障をきたしてしまう。極めて重要な仕事である。
 
 

愛 その3
就学児は子連れ出勤OK 今後は保育費の補助も

 
ハードを整え、評価でモチベーションを高めても、
育児との両立ができなければ、仕事を続けることは困難だ。
中畠さんの、従業員に対する「愛」すなわち「こうしてあげたい」「ああしてあげたい」の気持ちは、当然そこへも向かっていく。
「シングルマザーの方が増えているのを感じます。そうした方や、
小さなお子さんがいる母親にも、できるだけ心地よく、安心して働いてもらえるよう、本人の希望に沿った“オーダーメイド制シフト”や、“工場内託児所”制度などを設けました」
工場内託児所制度とは、要は「小学生以上の子どもを、職場に連れてきてよい」ルール。
 
 
授業が終わった小学生が喜久屋の工場に「下校」して、そこでお母さんの仕事が終わるのを待ち、一緒に帰宅するのである。
「託児所といっても、特別の施設があるわけではありません。
学校帰りのお子さんに、工場にもともとある休憩室で、遊んだり、宿題をしてもらっていいというだけです。
土曜出勤の日や、学校が休校のときなど、朝からいてもらってもかまいません。
 
 
工場には事務スタッフが常駐しているので、事務仕事をしながら子どもの様子を見ておくことができるのです。
何より大きいのは、休憩室で一緒に休むことになる当社の20年選手、30年選手のパートさんが、超ベテランのお母さんでもあることです。
これ以上安心な託児施設はない、とさえ言えると思いますよ」
 
 
その中畠さんが、さらに構想していることがある。
未就学児の子どもを持つ女性パートに対する、「保育費補助制度」である。
就学児だけでなく、未就学児を育てるお母さんパートへの「こうしてあげたい」「ああしてあげたい」ということだ。
 
 
「現状の、休憩室を利用した託児体制では、未就学児はやはりおあずかりできません。
でも、一番手助けが要るのは、実は保育園児を抱える親御さんだと思うのです。
なので、現在子どもを保育園に預けているお母さんに対して、保育にかかる費用のうち、区や市からの補助を除いた実費を、全額補助する方向で検討をしています。
本当は、自前で保育所を持つのが一番だと考えており、実はそこも構想中です」
 
 
 
 

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