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働き方コラム

顧客アンケートで「心を通い合わせる」経営手法【長野第一ホテル】第2回

 

「誰一人辞めさせない」「日本一のホテルになるのです」

「会社をよくするには、人間関係をよくすること」

 

この、宇都宮さんの言葉に少し解説を加えれば、「心が通い合う」状況を社内に作ること、と言えるだろう。
飲み会や食事会の開催も、毎月一度全社員を集めて行う研修も、
全社全員の「心が通い合う」ための手段であり、仕組みである。

 

しかも、全社員が集まる最初の場となった「新・長野第一ホテル」スタート時のセレモニーで、
宇都宮さんはこう言ったのだ。
「全員、このまま、長野第一ホテルで働いてください。私は誰ひとり辞めさせません」
経営者が交替し、いったい何を言い渡されるのか。従業員が悪い想像を巡らせるのも不思議はない。

 

予想外の言葉に、会場全体から安堵の声が漏れ、中には泣いてしまう人も出たという。
その場で宇都宮さんは、こうも言った、と振り返る。

 

「これから行うのは、経営再建ではありません。私たちは、日本一のホテルになるのです」

 


宇都宮会長

 

「心が通い合う」マダム会、ナイト会、フロント会

 

「これから行うのは、経営再建ではありません。
私たちは、日本一のホテルになるのです」という、宇都宮さんの言葉は、
不安が溶けた社員の心に、響いたに違いない。

 

その「新・長野第一ホテル」のスタッフが、
「心が通い合」わせるための仕組みの一つが、
宇都宮会長・渡辺営業部長を交えた、
部署ごとの食事会であり飲み会だ。

 

「ベッドメイクやお掃除をしてくれるパートさんとの会は、
皆さん全員女性なので『マダム会』と言っています。
会のスタートは、彼女たちが仕事を終える午後2時か3時頃。

 

夕食準備に帰る夕方5時ごろまで、
美味しい食事と、飲みたい人にはぞんぶんに飲んでもらいます」
「同じく夜勤のフロントスタッフとの会は『ナイト会』。
彼らの勤務は、午後8時から仮眠を挟んで翌朝8時までなのですが、

当日は日勤のスタッフとシフトを入れ替えて夕方5時から始めます」

 


ナイトスタッフ(夜勤のフロントスタッフ)の皆さん

 


社内に貼られた研修会とマダム会のお知らせ

 

 

その、日勤のフロントスタッフとの会は『フロント会』。夜勤の人に早めに申し送りをし、
勤務を引き継いだ後、夜の6時ごろからのスタートです。これらが高じて、ホテルの駐車場を利用し、
お客さまも参加できるバーベキュー祭りにまで発展しましたが、
さすがに保健所からお咎めが来て、中止になってしまいました」
そうした酒食の場では、教育的なことは一切行わないし、言わないという。

 

しかし、その「何もしていない、楽しい場」が、組織作りには大事なのだと宇都宮さんは説明する。
「要は、良い社風をどう作るか、なんです。社風は、人間関係が作ります。

 

中央タクシーは今や欠勤や遅刻など皆無ですが、それも良い社風、良い人間関係がゆえだと思います。
欠勤や遅刻は、お客さまや同僚に迷惑をかけます。

 

なので、人間関係がよくなれば、自ずからできなくなるのだと思います。
長野第一ホテルも、相当に良い社風になりました」

 

全社員研修の内容は「アンケートを読み上げる」

良い社風。だれしも作りたいが、簡単にはできないものの筆頭だろう。
長野第一ホテルでも、すぐに足並みがそろったわけではない。
そこに寄与したのが、全社員研修だ。

 

「私自身は日常的な注意など、一切することはありません。
ただ、2012年10月のスタート集会以来、
毎月第三水曜日に、全社員研修を欠かさずに行っています。

 

時間は朝9時半から11時まで。フロントスタッフだけは、
交替でお留守番をしてもらいますが、
あとは全員参加が必須です。といっても、
内容は、『お客さまアンケート』を一か月分、
読み上げるだけです。そこに書かれた内容に関連して、
私がほぼ一方的に話をします」
実は「お客さまアンケート」は、
宇都宮さんが経営を引き継ぐ前から行っていた。

 

客室に用紙を置いておき、書き込んだらエレベーター前の専用ポストに投函してもらう仕組み。
ところが回収は、1か月に3~4枚程度、あるかないか、という状況だった。
「しかも内容は『きたない』とか『値段に見合わない古さ』とか、苦情ばかりです。

 

それを一つひとつを読み上げて、ホテルとしていったいどうしたらいいのか、
中央タクシーでの例などを引きながら、皆に考えてもらえるよう、話してきました」
中央タクシーは、お客さまとのエピソードに事欠かない。

 

例えば、

「産婦人科を退院し、生まれたばかりの赤ちゃんを連れて帰る際、タクシーを利用したお母さんからお礼の葉書をいただいた。

書かれていた内容は『うちの前は路地でクルマがはいれません。

そんななか、大雨になってしまい、どうしようかと思っていたら、
運転手さんが“私、子育て経験がありますから”と、赤ちゃんが濡れないようにご自分の服でくるんで、
玄関まで抱っこしていってくれたのです。

おかげで、いまも元気にすくすくと育っています。中央さん、本当にありがとうございます』というものだった」

 

といった具合である。

 

 

便器に顔を突っ込み掃除するパートの後ろ姿に手を合わせた

 

目指すのは、「圧倒的な清潔感とアットホームなサービス」だ。
この二つを高めるため、さらに加えて宇都宮さんが強調してきたのが
「日本一の笑顔」と「かゆいところに手が届くサービス」と、
「とにかく手間暇をかけなさい」ということだ。

 

これを、「人は、忘れる生き物だから」と言って、何度も繰り返し話してきた。
「例えばお客さまがフロントに、駐車場の場所を聞きにきた場合、
以前は口頭でご説明をして終わりでした。ところが今では、カウンターを走り出て、
実際の場所までご一緒し、ご案内するようになっています。しかも『誰がご案内するか』、
スタッフ同士で競争しているかのようです」
と渡辺さん。

 

一方清掃のスタッフは、ともかく「清潔に」、
そして「備品を磨く」ことにこだわった。
洗面所のカランは一点の曇りもなく、
トイレは「素手で触ってもきたなくない」と
スタッフ自ら胸を張るほど、とにかくピカピカに磨き上げる。
宇都宮さんは言う。

 


古いが、ぴかぴかに磨き上げられたカラン

 

「私は、ホテルに来たときは、必ず最上階までエレベーターで上がります。
そこから、1フロアずつくまなく歩き、全員に『ありがとう』とか『家族は元気か』とか声をかけながら、
降りてくるようにしているんです。中には便器に顔を突っ込むようにして磨いてくれている人もいて、
そんな後ろ姿を見ると、背後から思わず手を合わせたくなりますよ」
ちなみに地下には、設備点検と修理業務を請け負う人が、
自作の簡易ベッドで寝泊まりしているという。

 

「何せ古い設備だから。深夜に何かあったら、お泊りのお客さまも、スタッフの方も困るでしょう?
だから、いつ何があってもいいように、ここに常駐していたいんです」
というのがその理由。

 

安全面には最大の配慮をしつつ、ありがたく受け入れている。

 

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