あなたが考える「働きかた」とは、どんなイメージですか?
私は、「働きかたは、生きかた」だと思っています。
「働く」は「傍(はた)を楽(らく)にする」と表現されます。つまり、あなたに関わる人たちに、貢献をすることです。その貢献のしかたにはいろいろな形があり、これはすなわち「生きかた」に他ならないと思うからです。
だから「働きかた」は、人によって違います。
一人ひとり、生きている環境が違い、価値観が異なるので、当然です。
さらに、同じ人のなかでも、変化していきます。
例えば、フルタイムで働いていた女性が出産に伴い、一定の期間家事や育児に専念したり。病気療養中の人が体力に合わせ週2日の勤務にしたり。もちろん、専業主婦やPTA活動、各種ボランティアなど金銭報酬を伴わないものも「働く」です。「傍(はた)を楽(らく)にして」いるからです。
よく聞く言葉に、ワーク・ライフ・バランスがありますが、「ワーク」と「ライフ」を両極端に置いた対立概念としてとらえることには、違和感を覚えます。
そうではありません。
一人ひとりの「人生(ライフ)」のなかに、「傍(はた)を楽(らく)にする」さまざまな「働く」があり、その一部が「ワーク(金銭報酬を伴う仕事)」ととらえた方が、自然ではないでしょうか。
そこで大事なのは、働く人が充実感を持ち、納得して働けることだと思います。これは、雇用労働の場合、企業と人との「相思相愛」な関係によって、もたらされます。
「相思相愛」な関係とは、企業の理念でありミッションのもと、雇われる側(社員)と雇う側(経営陣・管理職・上司)が、互いに歩み寄り、協力しあい、信頼しあい、「あなたに働いてほしい」「ここで働きたい」と思い合っている関係です。
実際には、両者は相反する立場になりやすいものです。それでもなお、両者の思いの合致点を追い求めていくことが大事だと考えています。なぜなら、その方が、雇われる側だけでなく、雇う側も、幸せだからです。両者は、相手の「思い」を様々な形で受け取ることで、気持ちを高め、力を発揮することができます。結果、経営戦略が着実に実行に移され、予定された収益確保に近づきやすくなるのです。
この「相思相愛」の考え方は、1996年から一貫して、企業における人事マネジメントの現場を、人事マネジメント専門誌の記者・編集長として取材し続けてきた、私自身の経験に基づきます。数百に上る企業および、働く個々人へのインタビュー取材から、人が定着しモチベーションやチームワークの高い組織、改善などが日常的になされ、業績が長期にわたって高まっている企業の共通点が「相思相愛」だと気づいたのは、私がまだ2冊目の本を書いていた、2005年のことでした。
「働きかた」改革も、女性活躍推進も、同一労働同一賃金の考え方も、両者が「相思相愛」になるための手段です。育児や介護との両立など、働く側の就労ニーズの変化に対し、今、雇う側が必死で整えているのです。
誰もが、自分の置かれた状況や自らの意思により、主体的に「働きかた」を選べる社会。一方、企業が、そんないろんな「働きかた」を柔軟に受容しながら、雇用を維持・創出し、成長・発展していける社会。
そんな社会づくりの一翼を、“相思相愛”の考えに基づき、「働きかた」を研究・提案することで、担っていきたいと思います。