<< 目次 >>
第1回 登録で4時間、オーブントースターを持ち帰る!?
第2回 「マネキン」、売り場でピザを焼いて売る
第3回 マネージャーの「評価コメント」に愕然
第4回 「日雇い」ゆえの疲労・ストレスと、仕事意識
第5回 スーパー2社の「大違い」
第6回 マネージャーに「はなまる」もらった!
第7回 驚愕の給与支払い「消えた私の9000円(涙)」
第8回 私が独立を決めたわけ~「職場はもっと笑顔になれる!」
終わりに 労働者はみんな「人」である
パート・アルバイト労働について語りながら、
私自身がパート・アルバイトで働いた経験は、はるかかなたの学生時代。
「それって、違うんじゃない?」
これが、試食販売の日雇いパートで働いてみた理由です。
「働く現場で、自分で“現実”を感じることが大事ではないか」と、
至極単純に思ったのです。
実際に働いたのは、12月23日の祝日と、翌24日。
まさにクリスマスイブの晩でした。
そして、体験目的で応募した“試食販売”の仕事は、
すでにこのブログでさんざん書いてきたように、
想像以上に過酷でした。
当日の「職場」となるスーパーは2日とも違い、
「マネキンさん」「お姉さん」と呼ばれるアウェーな環境のなか、
毎日、初めての職場で、
初対面の人との人間関係を紡いでいくストレスが、
明らかにありました。
実際の仕事では、試食販売の業務スタートとなる10時以降、
正に、立ちっぱなし、叫びっぱなし。
具体的には、
「いらっしゃいませー! いらっしゃいませー!」
「今日は○○のチルドピザがお買い得ですよ!」
「クリスマスのパーティーにいかがでしょうか」
「今日は試食を行っています。
この機会にぜひお味を見ていってください!」
など、にわか仕込みのせりふを必死で叫び続け、
ピザを焼いたり、フライドチキンを切って、
家から持参したお皿に盛り付けては、お客さまに近寄っておすすめします。
そんななか、たまたま近くを通った
当日の「上司」であるマネージャーさんらにかけられる言葉は、
「今日の売上はマネキンさん次第なんだからね」
「あなたが頑張ってくれないと困るんだよ」
ホンネなのでしょうが、
言われる身には、とても冷たく聞こえます。
しかも、ピザは、前日のそのスーパーの特売商品。
「地元密着型のスーパーで、
前日に198円で特売していたピザを、
今日298円でたくさん売れと言われたって、ムリ
(売場の社員さんに聞いちゃったんだからね!)」
という、反発の気持ちすら覚えました。
拘束のされ方と、給与支払いにも、疑問を持ちました。
というのも、試食販売の業務開始、
要するにお給料が発生するのは10時からなのに、
私を雇っている試食販売会社からは、
「9時前にはスーパーの入り口に行って、
出勤報告の電話をしてください」と言われます。
試食販売後の業務が終わる18時以降も、
後片付けや、試食販売の会社に提出する報告書の記入などで、
1時間以上もそのスーパーから出られません。
なのに給与は、きっちり7時間分しか、支払われないのです。
最寄り駅から自宅までは、さらに2時間かかります。
つまり、通勤、往復4時間です。
正直、「割に合わない」と思いました。
そんな二日間を終え、
予想だにしなかった「疲労困憊」状況に陥ったのは、
心理的にも肉体的にも通常とは違う活動をしたからにほかなりません。
実際、2日目の終わりには、足はまさに棒のよう。
10キロメートルくらいのジョギングは
苦にならない程度には鍛えている私が、
最寄り駅までの15分を歩ききれず、
何度も立ち止まってしまいます。
「心理的」な部分においても、
強いダメージを明確に受けた瞬間が、実はありました。
試食販売会社から指示されたとおり、
所定の「業務報告シート」の、ほんの2センチ角くらいのスペースに、
「働きぶりに対する評価」を書いてくれるよう、
当日の上梓である売場マネージャーに依頼したら・・・、
「自分で書いといて」
という一言。
「えっ・・・」。
耳を疑うとはこのことです。
これでも、必死で働いたのです。
「これだけ頑張ったのだから」という明確な自負と、
そこに対する評価やねぎらいの期待がありました。
それなのに・・・。
「期待に応えようと、今日一日、力を振り絞ってきたのは、何だったんだ?」
と、本当に思いました。
そして同時に、
「有期雇用契約のパート・アルバイトが、その必然として、
『近い将来自分と無関係になるかもしれない』職場や仕事のために、
参加・参画意識をもって携わることの難しさ」
を、改めて実感したのです。
もちろん、たった2日の単発仕事で、
わかることなどたかが知れています。
また、あくまで1日の雇用契約を2日間しただけであり、
3カ月や半年、1年契約で働く人たちと同じ経験をしたわけではありません。
代表性に欠ける可能性はあるでしょう。
でも、ここから得られた教訓は、
パート・アルバイトをマネジメントする際の留意点として、
きわめて重要であると思いました。
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