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働き方コラム

試食販売「日雇いパート」経験から見えたもの【平田未緒のパート労働体験ルポ】第6回

 

第6回 マネージャーに「はなまる」もらった!

 

試食販売2日目は、大型ショッピングモール内の大手スーパー。
午前中の仕事を終え、
「社員食堂があるから、お昼食べてきて」の言葉に
喜々として持ち場を離れたはいいものの・・・
迷路のような館内をさまよったり、
何度もカードキー操作を間違えセキュリティにひっかかり、
ようやくたどり着けたのは、なんと30分も経ってから。

 

雰囲気は、長テーブルにパイプ椅子が並んだ「昔の学食」。
150人は座れそうなその片隅で、
厨房のオバチャンから「焼き鳥丼と小鉢とおつゆのセット」を受け取って、
プラスチック湯呑みのぬるくて薄ーいお茶と一緒に、
かきこみました。

 

 

周囲を見ると、仲間とおしゃべりしながら食事をしたり、
自作のお弁当を広げる2~3人から数人程度のグループがたくさんです。
半面、某スーパーのそれとは別の社章を付けている、
業者さんらしい「おひとりさま」もけっこういて。
観察しだすと見飽きませんが、いかんせん、時間がありません。
急いでお手洗いに寄り、身支度を整えて、ぎりぎり5分前には持ち場に復帰。
相変わらずてんやわんやの厨房で作業台を確保、
「ぎゃ! アチっ」→ 試食のテンコ盛り二つ作って売り場へ・・・
の繰り返しを、再度スタートさせました。

 

 

そんなテンポが崩れ、雲行きが怪しくなってきたのは、
午後も4時を回ったころでしょうか。
「ちょっと・・・! 売れてないじゃん!」
「パエリア、作りすぎ、ストップ!ストップ!」
売場主任らしい若めの男性正社員の声から、
かたい雰囲気がマネキンの私にも伝わります。
一方、すでに大量に揚げられたフライドチキンは、
何枚ものバットに山盛りに。
しかも、時は12月です。

 

調理の火の落ちた厨房は、室温も下がり、
さっきまで「ぎゃ! アチっ」だったフライドチキンは、
いつしか「ぬるい」を通り越し、「・・・冷たい」。
包丁を入れた感じが明らかに硬く、
脂が黄色く固まっているのが見た目にもわかります。
これをお皿に盛り、
「おいしいフライドチキン、ご試食どうぞ」と
言う勇気はありません。もちろん、売れるとも思えません。

 

 

そこで思い切って、フライヤー担当の男性に
「これ、揚げなおしてもらうか、
電子レンジとかで温められませんか?」
と、相談したら、「ちょっと待ってて。聞いてくる」
「あ、こんなことも上司の了解とるんだ」と思いつつ、
期待半ばで待っていると、
な、なんと答えは、「ダメ、だって」。

 

上司命令は「絶対」のご様子、
「え。でも・・・」といくら言っても効果なし。
仕方なく、断面に数ミリの黄色い脂が固まった、
冷たい試食をテンコ盛りにして、売場に出ました。
「おいしいフライドチキンいかがですかー」
心にフタをして叫べば、お客さまは寄ってきます。

 

でも、反応は案の定。
思わず「わ、冷たっ」と口走る人や、無表情で立ち去る人。
特に子どもは正直で、何人もが「マズイ~」と大声で。
これをたしなめる親御さんから
「ごめんなさいね」と謝られるやり切れなさ。
それでも、厨房に戻るたび
「どう? 売れてる?」
「お姉さんに頑張ってもらわないとさあ」
とトゲトゲ言われること、
その矛盾を自分のなかで消化するのは、
難しいものがありました。

 

 

クリスマスイブ、それも3連休の最後の晩ですから、
客足が落ちるのも、早いのですね。
定時の18時を10分過ぎてから、
「残業なし」を確認のうえ、試食台を片付けます。
その後、担当マネージャーを探し出し、
就労証明のサインと「ひとことコメント」をお願いすると・・・
「ごめんね、ほとんど見てあげあられてなかったんだよね」
と言いながらも、ボールペンで、
「よく頑張りました」
って、書いてくれたのです。

 

 

ん? この気分は・・・
そうだ! 小学校で担任の先生に、「はなまる」もらった気分です。
いや、いいんです。
前日、別のスーパーで、
「自分で書いといて」と言われたことに比べたら、
どれだけいいかわかりません。

 

 

それともう一人。
「こういう人がいるから職場が回るんだよな」
とつくづく思ったのが、
フライヤー担当の男性です。

いわゆる職位は低そうですが、
「今日はイブだよ、頑張っちゃうよー」
「○○さん、それ売れ行きよさそうじゃん!」
「仕込み5時からやってて疲れたよ~
○○さんもだよね、もひと踏ん張り!」
など、ともかく、明るく、声を出す、出す。
そんな彼につられて、周囲も湧いたり、なごんだり。
一日限りの私にもとても優しく、
作業スペースを都度確保してくれたり、
何を聞いても明るく答えてくれるのが、励みでした。

 

 

そんな励みに支えられながらも、終わったころには疲労困憊。
最寄り駅まで一気に歩けず、
脂臭い自分を引きずるように、途中で何度も立ち止まりながら、
ようやく電車に乗りました。

 

 

【第7回 驚愕の給与支払い「消えた私の9000円(涙)」】へ続く

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