<< 目次 >>
第1回 登録で4時間、オーブントースターを持ち帰る!?
第2回 「マネキン」、売り場でピザを焼いて売る
第3回 マネージャーの「評価コメント」に愕然
第4回 「日雇い」ゆえの疲労・ストレスと、仕事意識
第5回 スーパー2社の「大違い」
第6回 マネージャーに「はなまる」もらった!
第7回 驚愕の給与支払い「消えた私の9000円(涙)」
第8回 私が独立を決めたわけ~「職場はもっと笑顔になれる!」
おわりに 労働者はみんな「人」である
試食販売会社からは
「もし残業のご要望があったら、嫌がらずに残業してください」と
強く言われていましたが、すで売り場は閑古鳥。
もちろん、残業要請はなく、業務終了となりました。
といって、すぐに上がれるわけではありません。
借りた試食台を片付けたり、こぼれたピザの破片を掃除したり、
持参したお皿やまな板、テーブルクロスや、
1日中使い続け熱をもったオーブントースターを、
朝まだ暗いなかもってきた通り、巨大な紙袋に押し込んだり。
さらに、今日の販売総量を、
「ベーコン」「チーズ」「シーフード」など種類別に、
ポスレジの数値を聞いて確認します。
試食延べ人数は、暗く雑然としたバックヤードの片隅で、
やはり種類別に、使用したピザの空き袋からカウントしました。
そんなこんなしている間に、あっという間に一時間。
もちろんここは、給与算定に入りません。
だんだん、嫌になってきます。
それでも、最後まで真面目に一所懸命やったのは「仕事への責任感」。
なーんてキレイゴトだけではもちろんなく、
登録説明会の会場で、試食販売会社の社員にしつこく言われたある言葉が、
強く影響していました。
いわく「この紙にいいコメントを書いてもらうよう、頑張ってください」
この紙とは、試食販売会社に提出する、
3枚複写・A4サイズ1枚の業務報告書。
すでに確認した、販売数量や試食総数を書く欄のほか、
「ご担当者からのひと言」欄があり、
今日のがんばりを、具体的な言葉で評価してもらえ、というわけです。
「なんて書いてくれるだろう♪」。
ものすごく純粋な期待を胸に、担当マネージャーさんを探し歩き、
やっと見つけて、コメント欄への書き込みを依頼しました。
ところが。
「・・・自分で書いといて」
「へっ?」
一瞬、思考が止まりました。
え、どうして?
なんで?
なんなの???
うっそおおおおー。。。
だって、コメント欄は、幅3センチ高さ2センチです。
ここに「ひとこと」も書けないなんて。
それどころか、言われた言葉は「期待したほど売れなかったね」。
もう、愕然です。
いえ、初体験ですから、私のお勧めも悪かったかもしれません。
それでも、オーブントースターのタイマーを、
お昼休み以外一度も切ることなく焼き続け、
ともかく叫び続けて、食べていただくことを、実直にやりました。
なにより、私は、知っている!
昨日は同じ商品を、今日よりも100円も安く「特売」していたことを。
だって、品出ししている若い社員さんに聞いたんだもん。
「昨日は198円でしたよ」って。
そもそもこの手の商品は、
値崩れし通常価格が300円強であることを、
主婦たる私は知っている。
若い社員さんに訊ねたのは、
そうした商品を「今日は298円の“特売”でーす」と言わされることに、
ためらいがあったから。
そしたらその若い社員さん、わざわざチラシまで見せてくれて。
そこには、クリスマス用の「昨日の」特売商品として、
そのピザが大々的に掲載されていたんだもん。
最寄り駅に1時間に4~5本しか電車の来ない地元密着型スーパーで、
昨日より100円も高い商品を、
試食だけで売れると思うほうが間違いだ(涙)。
読者の皆さま、すみません。
そのときのことを思い出し、つい熱くなってしまいました。
話をその日その時間に戻します。
もろもろを終え、寒い廊下で着替えをし、
ようやく通用門を出たのが19時半。
その後寒風吹きすさぶホームで、
缶入りココアで手に暖をとりつつ、こごえながら電車を待つこと15分。
ここから家まで、さらに2時間かかります。
「なんだったんだろう」。
多分もう、二度と会うことのない担当マネージャーさんの顔は、
すでにうすぼんやりとした記憶となり、定かには思い出せませんでした。
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