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働き方コラム

試食販売「日雇いパート」経験から見えたもの【平田未緒のパート労働体験ルポ】第3回

 

第3回 マネージャーの「評価コメント」に愕然

試食販売会社からは
「もし残業のご要望があったら、嫌がらずに残業してください」と
強く言われていましたが、すで売り場は閑古鳥。
もちろん、残業要請はなく、業務終了となりました。

といって、すぐに上がれるわけではありません。
借りた試食台を片付けたり、こぼれたピザの破片を掃除したり、
持参したお皿やまな板、テーブルクロスや、
1日中使い続け熱をもったオーブントースターを、
朝まだ暗いなかもってきた通り、巨大な紙袋に押し込んだり。

さらに、今日の販売総量を、
「ベーコン」「チーズ」「シーフード」など種類別に、
ポスレジの数値を聞いて確認します。

試食延べ人数は、暗く雑然としたバックヤードの片隅で、
やはり種類別に、使用したピザの空き袋からカウントしました。
そんなこんなしている間に、あっという間に一時間。
もちろんここは、給与算定に入りません。

だんだん、嫌になってきます。

それでも、最後まで真面目に一所懸命やったのは「仕事への責任感」。
なーんてキレイゴトだけではもちろんなく、
登録説明会の会場で、試食販売会社の社員にしつこく言われたある言葉が、
強く影響していました。

 

いわく「この紙にいいコメントを書いてもらうよう、頑張ってください」
この紙とは、試食販売会社に提出する、
3枚複写・A4サイズ1枚の業務報告書。
すでに確認した、販売数量や試食総数を書く欄のほか、
「ご担当者からのひと言」欄があり、
今日のがんばりを、具体的な言葉で評価してもらえ、というわけです。
「なんて書いてくれるだろう♪」。

ものすごく純粋な期待を胸に、担当マネージャーさんを探し歩き、
やっと見つけて、コメント欄への書き込みを依頼しました。

ところが。

「・・・自分で書いといて」

「へっ?」

一瞬、思考が止まりました。

 

え、どうして?
なんで?
なんなの???
うっそおおおおー。。。

だって、コメント欄は、幅3センチ高さ2センチです。
ここに「ひとこと」も書けないなんて。
それどころか、言われた言葉は「期待したほど売れなかったね」。
もう、愕然です。

いえ、初体験ですから、私のお勧めも悪かったかもしれません。
それでも、オーブントースターのタイマーを、
お昼休み以外一度も切ることなく焼き続け、
ともかく叫び続けて、食べていただくことを、実直にやりました。

 

なにより、私は、知っている!
昨日は同じ商品を、今日よりも100円も安く「特売」していたことを。
だって、品出ししている若い社員さんに聞いたんだもん。
「昨日は198円でしたよ」って。

そもそもこの手の商品は、
値崩れし通常価格が300円強であることを、
主婦たる私は知っている。

若い社員さんに訊ねたのは、
そうした商品を「今日は298円の“特売”でーす」と言わされることに、
ためらいがあったから。

そしたらその若い社員さん、わざわざチラシまで見せてくれて。
そこには、クリスマス用の「昨日の」特売商品として、
そのピザが大々的に掲載されていたんだもん。

最寄り駅に1時間に4~5本しか電車の来ない地元密着型スーパーで、
昨日より100円も高い商品を、
試食だけで売れると思うほうが間違いだ(涙)。

 

読者の皆さま、すみません。
そのときのことを思い出し、つい熱くなってしまいました。
話をその日その時間に戻します。

もろもろを終え、寒い廊下で着替えをし、
ようやく通用門を出たのが19時半。

その後寒風吹きすさぶホームで、
缶入りココアで手に暖をとりつつ、こごえながら電車を待つこと15分。
ここから家まで、さらに2時間かかります。

「なんだったんだろう」。

 

多分もう、二度と会うことのない担当マネージャーさんの顔は、
すでにうすぼんやりとした記憶となり、定かには思い出せませんでした。

【第4回 「日雇い」ゆえの疲労・ストレスと、仕事意識】へ続く

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