パート・アルバイトに定着してもらうには、いったいどうすればいいのか? これについて、静岡の店長・人事担当者のためのお役立ちサイト「ヒトクル」に平田未緒が執筆した記事を、同サイトのご厚意のもと、転載しています
第8回 どこがわかれ道?パート定着のための必須3要素とは?
某ホテル・客室清掃パートに学ぶ「定着」のポイント
前回、人手不足のホテル業界、それも人気があるとはいえない「客室清掃」職において、パートが定着しているホテルの事例をご紹介しました。
【実例】『お掃除のおばちゃん』あつかいは一切なし!客室清掃パートが辞めないホテルで実践していることとは?
それも、実際に同ホテルで働いているパートさん自身にインタビューし、彼女たちの上司であるマネジャーにも聞いたところ、下記がポイントになっていることが分かりました。具体的には、
・トップが掲げる『圧倒的な清潔感とアットホームなサービス』を全員で目指している
・その達成度合いやお客様満足度を、お客様アンケートによって客観的に把握し共有。皆の励みになっている
・アンケートに書かれた「声」を毎月全体会議でトップが読み上げ、パートも全員、共有している
・「全員の努力によりリピートのお客さまが増え、客室稼働率が上がった」という理由を明確にし、時給も上がった
・全員が「お客さま」の方を向いているので、派閥がなく、人間関係がこじれない
・家事に支障がない14:00~17:00の時間帯で、定期的に飲み会を実施
・全体会議や飲み会により、社内コミュニケーションが取れ、風通しがよい
・派閥がなく、人間関係がよいので、休みの相談などもパート同士でしやすく、融通が利いている
・トップやマネジャーとパートの間に溝がないので、なんでも相談してもらえている
といったことがポイントになっていたかと思います。
パート定着の必須3要素~相思相愛になるために
実はここには、パート定着の必須3要素が、集約されています。具体的には、以下の3つです。
①働きやすさ・処遇納得度
②コミュニケーション・参加・参画
③やりがい・自己成長
この3つは、私がかつて取材記者として、パート・アルバイトを雇用する企業や、パート・アルバイトで働く人を、多数取材するなかで見出した、「パート・アルバイトさんと相思相愛になるための」ポイントです。逆に言えば、この3つを感じてもらえなければ、パートさんと相思相愛にはなれません。つまり、辞めていってしまいます。特に「よそにいくらでも仕事がある」今は、その傾向が顕著です。
ちなみに、上の図1に示したとおり、この3つがいずれも高いのが「相思相愛ゾーン」。自社がここに位置していれば、そこで働くパート・アルバイトさんは「夫の転勤」「子どもの就学」「学校卒業」など、不可抗力がない限り、辞めることはあまりありません。一方、この3つがいずれも低いのは「危機的ゾーン」。入社して、自社をこのように感じた人は、早々に辞めてしまって当然です。
働く上で「制約のある」人たちのマネジメント・ポイント
ちなみに、この3つは、どれも同じくらい大事です。でも、敢えて「①働きやすさ・処遇納得度」を第一にしているのは、パート・アルバイトさんはそもそも、働く時間に制約がある人たちだからです。家事や育児、あるいは学業など、仕事以外にも「大事な役割」があるため、無理なシフトを押し付けたり、働く時間に融通が持たせられない職場では、そもそも続けていけません。
つまり「働きやすさ」のプライオリティが、正社員に比べて、圧倒的に高いのです。その分、部分的な仕事となりがちで、処遇もそう高くはできないのが普通です。
でも、そこにも「納得度」は必要です。例えば「時給相場が高まり、新規採用できないので、新人パートの募集時時給は上げたけど、先輩パートの時給は据え置いたまま」などは愚の骨頂。先輩パートの「納得」は到底得られません。会社側から「相思相愛」を踏みにじるようなものであり、ベテランスタッフの退職を生んでも、仕方ないでしょう。
パートには「やりがい・自己成長」欲求がない?
一方「③やりがい・自己成長」についてはどうでしょうか。いろいろな企業で話していると、たまに「パート・アルバイトは腰掛仕事。うちには、やりがいを求めたり、自己成長したい人なんていない」と決めてかかっている人を見かけます。でもこれは、大変にもったいない思い込みです。
というのは、やりがいや自己成長は、有名なマズローの欲求5段階説(上の図2参照)の「第4段階 承認欲求」「第5段階 自己実現欲求」に相応するものであり、人の根源的な欲求の一つだからです。
ちなみに「①働きやすさ・処遇納得度」は「第1段階 生理的欲求(寝食が満たされる)」「第2段階 安全欲求(安心して安全に働ける)」に、「②コミュニケーション・参加・参画」は「第3段階 社会的(所属・愛情の)欲求」に相応します。
「③やりがい・自己成長」意識の高いパート・アルバイトさんは、仕事上の工夫をしたり、リーダー的な役割につくことにも積極的です。会社にとって、頼れる戦力になっていってくれます。こうしたパート・アルバイトさんを「育てる気がない」マネジメントは、大変にもったいないことです。
本連載の第二回で、相思相愛な企業の事例としてクリーニング業「喜久屋」さんをご紹介しました。
第二回【実例】3K職場でも人が辞めない理由
ぜひ、これを読み返してみてください。相思相愛の3要素が見事に内包されていることに、気付いていただけると思います。
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