取材・文/働きかた研究所 平田未緒
同「企業側には『このくらいの量・質の仕事を、いくらぐらいでこなしてほしい』という希望があります。
つまり、仮に時間単価が高めでも、
その仕事にかかる時間を減らせれば、企業側の支払額は変わりません。
ポイントは、仕事を効率的にこなすことで、
ここにスキルや経験のあるシニアならではの付加価値が活きると考えました」
シニア経理財務のミッションは、
1、日本を支えている中小企業社長を経理財務面から補佐をする
2、シニアのブライトキャリアを活かす仕事を創造する
3、シニアの皆さんに仕事を通して「豊かな人生」を感じてもらう
シニア経理財務のミッション
その上で、提供する業務サービスの範囲を、経理・財務に特化した。
特化した理由の第一は、独自性を追求し、
このサービス分野でのニッチ・トップを極めること。
第二に、富澤さん自身が経理・財務分野で40年以上のキャリアをもつプロであり、
関連するいかなる仕事も「わかる」自信があること。
そして第三に、経理・財務分野は、仕事としての独立性が高く、
業務として『切り分けやすい』と考えたからだった。
具体的なサービスの仕組みはこうである。
つまり、経理・財務の人材が不足している企業から、
「社内に担当する人がいない」経理・財務業務を、
シニア経理財務が業務委託契約により受託する。
受託料金は、時間単価で決定し、仕事の内容に応じて変動する。
例えば一般的な経理・財務や総務関連業務であれば、
顧客企業がシニア経理財務に支払う対価は、時間単価2000円の設定だ。
決算業務ならこれが2400円となり、財務業務なら2600円に上昇する。
「業務委託契約ですので、業務を切り分け、当社にお任せいただく形です。
その受託した業務を、当社に登録しているベテランシニアに、当社から再委託するのです。
シニアへの再委託料金は、一般的な経理・財務、総務関連業務の場合、
時間単価1,500円、当社が時間あたり500円の手数料をいただいています。
ちなみに料金を時間換算にしているのは、
経理・財務の業務は一定の時間がかかるものがほとんどで、
その人なりのやり方や手順による大きな所要時間の差が生じづらい性格を
持っていると考えているからです」
時間単価2000円での、経理・財務の業務委託。
これを、経理・財務人材に困る中小企業に、「使いたい」と思わせるには、
「この対価で、ここまでやってくれるの?」と思ってもらえるクオリティが必要だ。
つまり、再委託先となるシニア人材の「質」が重要となる。
「シニア人材は、事前登録制を取っています。
顧客企業からの、細かな受託内容に応じ、登録者の中から適切な人材を、
私自身が人選しています」と富澤さん。
要するに、顧客企業が「任せてよかった」と思えるような登録者を、
いかに多く抱えているかが肝となる。
そのため、この7月に再度求人広告を出し、登録者の増強を行った。
「この夏の募集では、実に80名からの応募があり、そのうち書類選考を通った50名と、
約1か月半かけてじっくり面接しました。
その結果、当社に登録するシニア人材は、120名に増えました。
男性が100人、女性が20人、平均年齢は66歳です」
登録者を選ぶ際のポイントは大きく二つあるという。「経験・スキル」と「人柄」の二つである。
「経験・スキル」は、書類選考時に履歴書・職務経歴書でチェックし、
さらに面接で具体的に確認しながら測っていく。
この道40年の富澤さんだからこそ、この2ステップで登録希望者の業務経験はほぼ想像がつく。
一方「人柄」は、面接でのざっくばらんな会話を通じて感じ取っていくという。
面接で登録希望者を見、実際に質問で聞くこととして、
具体的には、大きく以下の7つの視点を意識している。
1、セールスポイント(その人の売り)は何か
2、何ができるか
3、働きたい一番の理由は何か
4、健康状態
5、中小企業の社長への対応は可能か
6、どんな人物か(全体評として)
7、その他特記事項
働くシニアと、サービスを利用する企業との具体的な“マッチング”は、
同社のサービスの肝である。
両者の満足に大きくかかわり、つまりは業績に直結していくからである。
加えて、マッチングがうまくいかないことは、同社の大きなロスでもある。
顧客からの満足が得られず、業務を受託するシニア人材を何度も変えることになれば、
売上を伴わない実務負担ばかりが増えていく。
「マッチングを的確なものとするため、私が見ているのは、
むしろ登録者の人となりや、なぜ働きたいのかなど仕事の背景です。
もちろん経験してきた業務の内容や果たしてきた役割等の確認もしますが、
特に中小企業の場合、社長の個性がとても強く、
人として『合う・合わない』ということが、マッチングに大きく影響するからです」
しかも、経理・財務という仕事がら、ひとたび業務を受託すれば、
多くの場合、社長にとても近いところで仕事をすることになる。
したがって登録希望者との面接は、できるだけフランクなコミュニケーションの場とし、
富澤さん自身が「相手の人となりをつかむ」ことを意識している。
もちろん「合う・合わない」の判断を下すには、
シニア経理財務に仕事を委託する企業をきちんと知る必要もある。
具体的には、どんな状況で、どんな仕事を任せたいのかをリサーチする。
加えて、その会社の雰囲気や風土、社員構成なども聞いていく。
受託した業務は、仕事を委託する企業の社内に場所を借りて、行わせてもらうケースが多いからだ。
こうした事前リサーチの上で、富澤さん自身が「この人ならば」と思う登録者を3人程度あげていく。
最終的な人選は、仕事を委託する企業側と話し合い、最もマッチするであろう一人に絞っていく。
人材紹介と違い、「登録者を入社させれば、おしまい」ではない。
クライアント企業と働くシニアに対する、毎月の請求・支払等の業務を通じて、
ずっと両者をフォローしていくことになる。
より良い関係構築を、最初から確かなものとすることが重要だ。
富澤さんの役割は、要するに、人と企業の「目利き」となることである。
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