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西伊豆観光みかん園で働いてみた【平田未緒のパート労働体験ルポ】

 取材・文/働きかた研究所 平田未緒
 
 
 
12月1日(日)の朝8時半。
私は、西伊豆、西浦にある木負(きしょう)観光みかん園を訪れました。
午前4時半に家を出て、今日はここで、単発の短期アルバイト。
 
観光バスが並ぶみかん園
 
夕暮れまで、あっという間の一日は、
観光みかん園での仕事に対する、自分の「甘さ」を、
思い知った一日でもありました。
「観光」という響きから私は、
接客・サービス的「楽しい!!」仕事を想像していたのです。
ところが実際は、たいへんきつい肉体労働。
そして、経験がものをいう、きわめて労働集約的な仕事でした。
 
 
もちろん、お客さまは「遊びに」来るわけですから、
笑顔でホスピタリティのある接客は重要です。
実際、観光バスが列をなして入ってきたり、個人のお客さまも多く、
一度にたくさんお見えになると、
対応を促す指示の声が、罵声のように飛び交いました。
「平田さーんっっっ!!」。
呼ばれる都度、裏の作業場での作業の手を止め、
私も売店や受付にすっ飛びます。
 
 
呼ばれて行うのは、売店での接客と、
みかん園まで歩いて5分程度の「ご案内」。
無言で5分はツライので、美味しいみかんの選び方や、
今年の状況、今日の天候の話など、
いましがた聞いたばかりの知識をフル披露して、
お客さまとの間を持たせます。
時に思わぬ質問があったりして、こちらはドキドキなのですが、
渋いエプロンを上からすっぽりかぶった私は
すっかり「土地の人」に見えるらしく、
皆さん、ふんふんと、聞いてくださいます。
 
 
 
しかし、こうした「接客」は、
観光みかん園の、言ってみれば表の部分。
それより、圧倒的に多いのが、
お土産用や、全国からの注文に応えるための、
収穫と選別、袋詰め、箱詰めの作業。
 
具体的には、こんな感じです。
 
 
1、収穫
一つひとつ丁寧に採っては「びく」と呼ばれる肩掛けの袋に入れ、
たまったら20キログラム入るプラスチックケースに移し替える作業の繰り返し。
すべてのケースがいっぱいになったら、軽トラに積み、作業場に運び入れる。
 
 
2、水ふき・品質チェック・選別
当日は、急激な冷えのためか露が降り、収穫したみかんはずぶ濡れといっていい状態。
木の上で完熟させたみかんはまさに「熟れ熟れ」、濡れたままではダメになってしまうため、
大量に運び込まれるみかんを一つひとつ、タオルでふいていく必要がある。。
みかんをふきながら、その一つひとつについて、キズや「水ぐされ」がないか、
硬すぎないかなどを確認し、大きさ別に選別する。
 
 
3、ネット・箱詰め・出荷
そのうえで、お土産用、贈答用、ほか、多彩なご注文に応じて、ネットや箱詰めしていく。
当日発送分は、ヤマト運輸が集荷に来るまで。時間との勝負。
 

一連の作業はずっと立ちっぱなし
 
 
しかも、ケースに山盛りのみかんは想像を絶する重さです。
例えば、露のついたみかんをふくため、
作業台にみかんを移そうにも、
みかんがいっぱいのプラスチックケースは、「うわ・・・重い!」。
最初は自力で持ち上がりません。
覚悟を決めてがばっと足を開いて足場を固め、
全身に力を込めて、ようやく持ち上げることができました。
 
 
加えて、作業場は、寒かった。
私が特別「寒がり」なせいもあるのですが、
日中は穏やかに晴れた好天であってなお、
午前中や夕方は、体の芯が冷たいのです。
 
 
ちなみに、完全防備で臨んだはずの、当日の私の服装は、
 
 
上/ヒートテック2枚、ハラマキ、張るホッカイロ(大)、カナダエスキモーみたいな地厚の手編みセーター、(早朝は、さらに、裏地モコモコ&フードにファーのついた上着)
 
下/超地厚のスキー用防寒用タイツ、厚地のニーハイソックス、ジーンズ
 
 
一応、私も女性にて、恥を忍んで書きましたが。
・・・いや、相当な厚着です。
素人の私は行けなかった「収穫」から戻られた皆さんは、
みかんの木に降りた「露」で、全身がびしょ濡れになっており、
体感温度はさらに低かったろうと思います。
 
ちなみに、「選別」はできない新顔の私が主に担当したのは、
みかんを拭くことと、お土産用の袋詰め。
指示された「大小取り混ぜ、1.2キロをネットに入れる」作業を、
ひたすらもくもくと行います。
 
 
 
単純作業だと思うとつらいので、
「目分量でいかにぴったり1.2キロにするかゲーム!」
に、一人チャレンジ。
次第に感覚で詰められるようになってきて、
「やった! ピッタリ!」と心のなかで
小さくガッツポーズする嬉しさや、
作業スピードが上がる楽しさを感じることができました。
 
しかし、そうした単純作業を、一番楽しくさせてくれたのは、
他の方々との、おしゃべりです。
手は止めず、作業スピードも落とさずに、
おみかんのこと、日々の暮らしのこと、
最近みかん園が受けた取材のこと、お客さまの変遷など、
話はどんどん広がります。
 
 
楽しいだけではありません。
会話することでこちらの心も開いているため、
何かわからないことが生じても、臆せず質問・確認できるのです。
もちろん「おしゃべり」は程度問題。
でも、結果的に仕事の質を高める、
とても大事な潤滑油になる場合もあることを、
このバイト先でも感じました。
 
 
 
「このバイト先でも」というのは、昨年のクリスマス、
某スーパーで試食販売の仕事を

パートでしたときと同じだったからです。

 

そのスーパーでは、
お惣菜調理の厨房に入って働きましたが、
一人のオジサン社員の朗らかでユーモアに満ちた
おしゃべり・声掛けにより、
朝5時からの仕込みで疲弊しきった厨房が、
ぐんと明るく、エネルギーに満ちたものに
なっていくのを感じたのです。
みかんの袋詰めをしていて、そのことを思い出しました。
 

みかん畑の背後に富士山が見える

 

 

そんな体験から、一夜明けた翌日、
軽い筋肉痛を感じながら、何より深く思い返されたことは、
働いている皆さんが、
仕事を楽しんでいらっしゃった、ということです。
仕事は、精神的にも物理的にも、
確かに人生を潤すものだろう、と、私は思っています。
そしてそれは、個々人がその仕事に
どういう気持ちで取り組んでいるかで、決まってくる。
 
 
そこに楽しさを見出そうとする姿勢があるかないかで、
仕事を通じて得られる人生の潤いは、
大きく違うのだ……ということを、
木負観光みかん園の皆さんの、
屈託なく優しい気持ちと、明るさから、
改めて思った一日でした。
 
 
[終わり]

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