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実例:一匹狼が、チームになって1位になった ~実話「吉野家」営業物語

 

記事:働きかた研究所 平田未緒

 

※この記事は、働きかた研究所の「対話型リアルチーム研修(システムコーチング®)による実話です。

※株式会社吉野家、及び、登場する個人全員の確認・了解を得て公開しています。

 

202081日、牛丼の吉野家北陸営業部の井上部長から返事が来た。

 

「私のチームは一匹狼の集まりなので、研修を受けたいです」

 

1か月前の710日、人事コンサルタントの私は、クライアントである吉野家の全営業本部長と部長合わせて23人に、「チームの関係性を対話で高め業績を上げる、営業部別の研修をしませんか?」とメールしていた。

 

飲食業のご多分に漏れず、吉野家もコロナ禍の影響をもろ被りした。北海道から沖縄まで約1200ある店は、当初「毎日が朝令暮改」というほどコロナ対応に追われまくった。

 

この影響で、当初予定していた研修は全て流れた。それでも「現場の希望があれば実施しよう」ということになり、私から直接声を掛けたのだ。

 

待つこと22日。唯一、自ら手を挙げたのが井上部長だった。彼はこう語った。

 

「北陸営業部は、富山、石川、福井、岐阜、長野の5県にまたがる広大な部です。計58店舗を、部下である6人のエリアマネージャーが見ています。ところが今回、その半数が入れ替わり、私より社歴がうんと長い、一匹狼のような人たちが異動してきました。正直やりづらく、チーム感はゼロです。そんな彼らをどうまとめ、部の業績を高めていくのか。ビジョンが全く描けません」

 

実際、全国の1200店舗が参加する7月の社内営業キャンペーンで、上位100 位以内に入った北陸営業部の店は2店だけ。研修前にオンラインで個別面談してみても、7人は本当にバラバラだった。

 

例えば「今のワン・チーム度は10点満点で何点ですか?」という質問に、あるエリアマネージャーは「3点」。別の一人は「ワン・チームになりたくない」と言い切った。

 

「そうなんですね」と頷きながら、私は恐れを感じていた。「果たして研修は機能するだろうか」と不安になった。

 

――頑張れ、自分。信じて、進め。

 

心のなかで、私は私の背を押した。

 

理由は二つ。

 

第一に、彼らに「チームで仕事をしたい」気持ちは薄かったが、「業績を上げ、部下である店長やパート・アルバイトさんを幸せにしたい」気持ちは強かったからである。「願い」が同じなら、それを核にチームになれると踏んでいた。

 

第二に、井上部長の悩みを解決し、彼を助けたかったからである。

 

というのも、彼の実直さ、誠実さ、吉野家では珍しいほどの温和さに、かねてから私が助けられていた。例えば、正に男社会である吉野家の「女性活躍推進」支援をしていた際、課長時代の彼の協力で、プロジェクトが大きく前進したこともある。

 

そんな感謝を伝えるたびに「いやー、別に」。真っ黒な眉と目の丸顔を、クシャっとさせて照れ笑いするのが彼だった。

 

その彼が、営業部長に昇進して4年目に、大きな壁にぶつかっている。

 

研修は「対話」を通じ、チーム内の関係性にアプローチする内容だ。それを全6回実施する。

 

不安半分で迎えた94日、1回目。金沢で初めて全員と「対面」した。

 

研修は、机を取り払い、椅子だけを距離を保ちサークル状に並べて実施する。全員が丸く向き合うが、場の雰囲気は何とも言えずぎこちない。見るからにベテランの柳さんは、足を前にボーンと投げ出し、椅子からずり落ちんばかりの姿勢である。

 

何より驚いたのは、井上部長の口ぶりだ。「下谷さん、これやって!」など、不似合いな命令口調で場を仕切っている。

 

――違う。

 

瞬時に思った。

 

――井上さんが、井上さんでなくなっている。

 

違和感のなか初回スタート。7人がチームになるには、「互いを知る」ことだと私は考えた。そして、一人ひとりに自分の人生や価値観を語ってもらい、他の6人から「感じたこと」をフィードバックしてもらった。

 

7人は率直に語り、互いにそれを受け取って、感謝や感動を伝え合った。すると場に温かな空気が流れ出し、想像を超える状況が現れた。

 

唯一の女性・山岸さんは大泣きした。男性たち6人も、笑顔だったり、目に涙をにじませたり。しかも終了後、彼らはオープンエアの店に行き、予定外の懇親会をしたのである。

 

2回目、彼らはなんと「心でつながるワン・チームになりたい」と言い出した。

 

3回目、7人はベテラン柳さんの本拠地・長野に集合した。そして、実に素直に自分の弱みや思考のクセを発見し合い伝え合い、新たな価値観を取り入れた。さらに「わくわくする目標」をチームで決めた。

 

目標は「11月の社内営業キャンペーンで1位になる!」。チームは互いに切磋琢磨し協力し、見事にこれを達成した。全国1200店舗中、山岸さん担当の店が1位を取った。さらに北陸営業部内の22 店が、上位100位以内に入ったのだ。

 

4回目、チームはさらなる挑戦を企てた。11月末に新規オープンする岐阜則武(のりたけ)店の初月の売上目標を、通常の135%に設定したのだ。しかもエリア担当の河合さん任せにするのではなく、「7人全員で」目標達成する計画を練り上げた。

 

5回目、チームはまた進化して、各自が自分の役割を超越し出した。例えば岐阜則武店で在庫切れを起こした食材を、隣接エリアを担当する川地さんが、自エリアの店から自分の足で届けに行った。さらに富山、石川、福井、長野からも、岐阜の営業を助け続けた。

 

締め日となった大晦日。彼らはコロナ第三波のなか、8桁の目標額をわずか186,019円上回り、走り切った。

 

6回目、チームは自らの変容を振り返り、承認し合い称え合い、互いに感謝を伝え合った。山岸さんは最初から泣いていた。柳さんは皆にいじられるほど優しい顔で笑っていた。井上部長も最後は涙に変わっていた。

 

6回中4回がオンラインだったのに、彼らは「心でつながるワン・チーム」になっていた。

 

私は彼らの変化を、河村泰貴社長に伝えたかった。それも直接、聞いて欲しい。

 

願いは叶い、2814時に「オンライン報告会」はスタートした。チームを代表して参加した井上部長、山岸さん、田中さんは、緊張しつつも率直だった。

 

田中さんは「チームの変化は、ベテランが歩み寄ってくれたから。愚痴っていた私も、皆に受容され、部下や仲間を思いやれるようになりました」と振り返った。

 

河村社長は「そう思うのは、具体的には何があったからですか」など、事実を問う質問を次々した。彼らは起きたことを自分の言葉で率直に語った。

 

社長は「皆さんの行動と素直さが本当に素晴らしいです。僕もよく『素直でいることは学びが多いよ』と安部修仁会長に言われました」と彼らを称え、ねぎらった。

 

報告会は、熱い空気のなか予定を30分超過し終了した。

 

3月になり、チームは新たな社内営業キャンペーンで記録を塗り替えた。全国1200店舗中、北陸営業部の店が111位を独占した。さらに部内の全58店舗中41店が、上位100位以内に入ったのだ。

 

これには私も驚いた。が、成果の理由はシンプルだと思っている。

 

それは、対話を通じ皆が心を開き合ったこと。思いや考えを伝え合い、受容される喜びが、人を素直にさせていく。そこに自然な優しさや思いやりが生まれるのだ。

 

そのくらい対話の効果は絶大だ。しかも誰でもいつでも、オンラインでも可能である。

 

コロナで分離しがちな今だからこそ、あなたも身近な誰かと対話して、思いを分かち合ってみてはどうだろう。

 

きっと関係性が変化する。

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