社員が定着し、成長し、生き生きと活躍する会社は、
そうでない会社とどこが違うのか?
20年にわたる現場取材経験から、私が出した答えは、
「社内が『相思相愛』である」でした。
上の絵は、相思相愛のイメージです。
私自身が2017年の新春に、色画用紙にパステルで描きました。
でも、これだけでは伝わりづらい。
言葉で表現すると、「相思相愛」はどうなるのか?
どうすれば、「相思相愛」になれるんだろう?
ずーっと考え続けてきたこのことを、まとめてみました。
◆「相思相愛」とはなにか
相思相愛とは、文字通り「お互いが、お互いを、思い合っている」状態です。
もちろん、ここでいう相思相愛は、
「恋に落ちる」といった類のものではありません。
そうではなく、「人としての、人を思う自然な気持ちを、
素直に届け合えている」状態。
このことを通じて、社長と社員、上司と部下、社員同士が、
互いに認め合い信頼し合えている状況のことです。
私は、かつて人事マネジメント情報誌の取材記者として、
社員が定着し、成長し、生き生きと活躍している企業の取材を、
20年近くにわたり行ってきました。
つまり、多彩な優良企業の社長や社員の方々に、
毎回長時間のインタビュー取材をお願いしてきたなかで、
その共通点こそ「相思相愛だ!」と、思い至ったのです。
◆「相思相愛」の効用
さらに、そうした相思相愛企業との関わりから、
社内の人たちが互いに信頼し合い認め合えていると、
互いの個性や特性を尊重できるようになる、
ということも学びました。
また、一人ひとりが力を発揮できるよう、
互いに配慮したりサポートし合えるようになることにも気づきました。
もちろん、社員の個性や特性は、
企業の存在目的に添って発揮される必要があります。
したがって、社員一人ひとりが
「社員である私たちは、なぜ・何のために、この会社に集っているのか」
という、そもそもの目的を理解していることは、
大前提として不可欠です。
もう少しやわらかくいえば、社員が
「お客さまは誰か」
「何をもってお客さまのお役に立ち」
「お喜びいただき」
「対価をいただいているのか」
を、共通認識できていること。
そうした企業が、相思相愛な状況にあると、
お互いの良さを生かし合いながら、
あるいは「もっとこうした方がいいのではないか」などと
互いにフィードバックし合い、成長しながら、
「今よりもさらにお役に立てるよう」
すなわち「自社の商品やサービスをもっとご購入いただけるよう」に、
動いていけるようになるんだ、
ということを学びました。
◆どうすれば「相思相愛」になれるのか
では、具体的には、いったいどうすれば、
相思相愛でない企業が、相思相愛な企業になれるのか?
大量の取材事例を紐解き、
実際に自ら組織マネジメントを行い、
あるいは、相思相愛コンサルティングを通じて
ご支援先企業の現場と直に接するなかで、
ずっと考え続けてきました。
そして、働く人にとって、自社の職場が、
1、働きやすく(就業時間等の柔軟性や仕事の安定性)
2、やりがい・自己成長感が感じられ
3、社内コミュニケーションが取れている
場合に、「ここで働きたい」「働き続けたい」と思えること。
結果として、社員が定着し、成長し、いきいき勤め続けられること。
それらを通じて、お客さまによりご支持いただける企業へと成長し、
業績にもつながっていく、
という解にたどり着くことができました。
これは、マサチューセッツ工科大学のダニエル・キム教授が提唱する、
「成功循環モデル」そのものです。
すなわち、「関係性の質」つまり「相思相愛」度が高まると、
「思考の質」が高まり、さらに「行動の質」が高まって、
「結果の質」つまり業績が変わってくるというサイクルそのものだ、
と、後になって気づきました。
◆人材難時代に必要な姿勢
今のような人材難の時代にあっては特に、
企業側が率先して「1」「2」「3」のための
取組を行うことが必要です。
その、具体的で地道な行動を通じてのみ、
「定着」「成長」「売上」といった果実を、
社員と共に味わえるのだということにも、
企業の現場から教えてもらったのです。
ところが、これが難しい。一筋縄ではいきません。
一つには、相思相愛のための手立てには、
手間や時間などコストがかかるからです。
例えば、人事制度を整えたり、
社内コミュニケーションを高める工夫をしたり、
教育・研修などもどうしても後手に回り勝ちで、
具体的に着手できない会社が多いのが実際です。
加えて、たとえ制度や仕組みを入れたとしても、
きちんと運用されなければ意味がないこと。
何より、制度を通じて「心」が伝わらなければ、
社員には一つも響いていかないこと。
運用されていても、それが形式的なものであると、
社員は「愛」を感じません。相思相愛にはならないのです。
◆困難の先にある相思相愛
社員に「心」を伝え、「愛」を感じてもらうことは、
簡単ではありません。
地道な取り組みが必要なことはもちろんですが、
そこに形骸的な何かがあったり、
社員を人として尊重することなくコントロールしようとする姿勢が見えれば、
社員はすばやくそれを察知して、心を閉ざしてしまいます。
社長や会社側に、そうした支配的な意図がなくても、
社員に誤解され、相思相愛になれないこともしばしばあります。
でも、それでもあきらめず、
うまずたゆまず「相思相愛」にむけて
地道に取り組んできた企業では、
その心は必ず社員に通じていきます。
◆圧倒的な差別化へ~社員の人生を創る~
最初は一部の社員から。
その後は、その一部の社員の変化を通じて、
周囲もじわじわと変わっていきます。
そして、ある種の臨界点を越えたとき、
社内は「あれ? いったいどうしたんだ?」と思うほどに、
相思相愛にむけてうごいていくのです。
その先にあるのは、圧倒的な差別化です。
社員が会社との間で「相思相愛」を感じ、
仲間と「相思相愛」である場合、
社員は会社を辞めようと思いません。
そして、仲間のために、お客さまのために、
自己成長していくために、仕事をしていくようになります。
こうなったとき、社長が行ってきた取り組みは、
単なる人材育成ではなくなります。
相思相愛な会社で、仕事をすることは、
自らの個性や可能性を最大限に開くことと等しくなります。
つまり、社長は、会社は、社員の人生を、
大きく創っていくことになるのです。
そこに生まれるのは、お互いの感謝です。
あなたも、私たちとともに、自社をそんな会社にしていきませんか?
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