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働き方コラム

【平田未緒コラム】労働力減少時代の「全社員活躍経営」

 

 

首相官邸のホームページにも特設コーナーがある
「一億総活躍社会の実現」。

 
・・と言われても、ピンとこないというか、
違和感を感じる方もいらっしゃるかもしれません。
 
 
でも、これを企業に置き換えてみたら、どうでしょう。
 
 
「全社員活躍企業」
 
 
・・・お!?
 
 
なんだかよくありませんか?
 
というか、企業を経営されていたり、人事を担っている方にとって
これは、「ありたい姿」の最たるものではないでしょうか。
 
 
・・・などということを考えていたら、
まさに「全社員活躍」を実現している企業、
そして「全社員活躍」を実現するために大きく舵を切った企業に
出会うことができました。
 
 
その企業とは、
福岡を拠点とした地域生協「エフコープ」さん。
そして、セゾンカードで知られる「クレディセゾン」さんです。
 
 
両社はともに、
「多様で安心できる働き方シンポジウム」(厚生労働省委託事業)の
事例企業。
 
 
当シンポジウムでは、私が基調講演と
パネルディスカッションのコーディネーターを
務めさせていただいたのですが、
登壇前の顔合わせを含め、
さまざまにお話をうかがうなかで気づいたことが、
両社の大きな共通点としての「全社員活躍」だったのです。
 
 
さらに、「全社員活躍」を実現するための「人事施策」にも、
共通点がありました。
 
 
なかでももっとも印象的だったのが、
雇用区分のシンプル化です。
 
 
すなわち、エフコープさんでは、
例えば宅配担当者について2002年度に
「正規職員」「エリアスタッフ」「コープスタッフ」「アップルメイト」
などにわたっていた雇用形態を、
今では「フルタイムスタッフ」「定時スタッフ(週所定労働時間35時間未満)」の
2種類にしています。
 
 
宅配担当以外の業務でも、
他には「アルバイター(週所定労働時間15時間未満/雇用契約期間3カ月以内)」と、
福祉事業に専門特化したスタッフがいるくらい
という、シンプルさです。
 
 
一方クレディセゾンさんでは、
「総合職社員」「専門職(職務限定)社員」「メイト社員(有期契約社員)」
の 3つに分かれていた雇用形態を、
この9月にひとくくりに「社員」として全員を無期化、
給与体系や職務内容、役割制限がないことなど含め、
すべて一本化してしまったのです。
 
 
 
ご存じのとおり、今、各企業が持つ雇用区分は、
以前に比べ多様化し複雑化しています。
 
各種限定正社員の導入など正社員をさらに細分化したり、
パートタイマーについても、 無期雇用契約と有期雇用契約があったり、
週の所定労働時間に応じて、
さらに細かく区分していたりしています。
 
そんななか、両社の取り組みは、この逆を行くもので、
かなり特徴的と言えるでしょう。
 
 
しかも両社は、業種も、人員構成も、企業風土も、
組織として歩んできた歴史も違います。
 
 
そもそも、その「人事施策」に到達した経緯も違いました。
 
 
では、なぜそうした施策をとられたのか?
 
 
これについて、実際におうかがいした情報をもとに、
動機・目的から整理してみたのが以下のまとめです。
 
 
————————————————————
<エフコープさん>
◆目的
2000年前後に陥っていた赤字構造からの脱却
 
◆目的達成のための考え方
圧倒的な三方よし(自生協の全職員はもとより、
労働者全体、 社会全体を視野に入れた「ありたい姿の実現」)が
結果的に収益につながる
 
◆目的達成のための人事施策
同一労働同一賃金の実現
70歳定年制の導入
 
◆具体的な実施事項
・複雑な雇用区分の簡素化(フルタイム・定時の大きく2つに集約)
・両社員区分横断の職務職能等級制度(60歳以上は職務給)の導入
・育児介護支援・福利厚生制度を含む徹底的な均等均衡処遇の実現
 
◆結果
利益向上 職員の年収アップ
 
◆結果を生み出した要因
かつてのパートタイマーを含めた 全職員の勤続・仕事意欲向上に伴う
宅配利用者の満足度向上・生産性の向上
 
 
 
<クレディセゾンさん>
◆目的
中期経営計画における利益の確保
新たなビジネスモデルへの挑戦による企業の持続的成長
 
◆目的達成のための考え方
自社で働く全人材の強みやキャリア・実績を可視化し、
その成長を支援し最適なポジション変更を通じて、
付加価値を最大化する
 
◆目的達成のための人事施策
全社員共通新人事制度の導入
 
◆具体的な実施事項
・雇用形態の統一(契約社員・専門職社員の廃止)
・全社員横断の役割等級制度の導入
・育児介護支援・福利厚生・確定拠出年金などの格差解消
・サービス先端企業を実現するための5つの行動(セゾンスタイル)を評価
 
◆結果(期待)
目標例として、2016年度連結経常利益530億円を、
2018年度に600億円にする、など
(2017年9月導入のため今後の計画値)
 
◆結果を生み出すであろう要因(予測)
かつての契約社員も含めた全社員の
スキル・キャリア・能力を可視化することによる
成長支援とポジショニングの最適化
 
————————————————————
 
 
 
要するに、 正社員だから、パートだから、契約社員だから、
などと言っていないで、
自社で働く全員にその能力を余すところなく発揮してもらい、
活躍してもらおう、という考え方。
 
 
そのためには、雇用区分に関わりなく
全員に等しく光が当たることが大切であり、
そうした光をブロックしかねない複雑な雇用区分や、
主体的な活躍を阻害しかねない
「働きに見合わない」処遇格差は廃止しよう、
というわけです。
 
 
「え、でも、そんなことをしたら、
人件費がとんでもなく上がってしまうのでは?」
 
 
というのが一般的な不安要素の一つですが、
これについてエフコープさんに訊ねると、
「実は人件費は上がっていない」とおっしゃいます。
 
 
さらにその理由を尋ねると「全員に光を当て、
全員に自分のキャリアビジョンを意識させることによって、
一人当たりの生産性が高まったから」 とのことでした。
 
 
私は、非正規労働をすべて正社員化すべき、
などと考えているわけではありません。
 
しかし、非正規労働つまり短時間・有期労働者
であるがゆえのデメリットも、実際にあると考えています。
 
 
具体的には、仕事の仕方や与え方が、
非正規労働者本人においても、雇用する企業側においても、
場当たり的・刹那的になりがちだ、ということです。
 
 
要するに、非正規労働者にとって働くことは、
「自分の時間の切り売り」になりやすい。
 
半面、企業側にとって非正規労働者を雇うことは、
多くの場合「労働力の消費」となっています。
 
 
でも、ここには広がりがありません。
 
育てることをせず、 「欲しいだけ」刈り取ったり、
摘み取ったりすることを続けていたら、
資源は枯渇してしまいます。
 
 
もっと言えば、そうした関係の職場には、
相思相愛は生まれません。
 
 
「(労使関係における)相思相愛」は私の造語ですが、
具体的には、下記のような概念です。
 
 
<相思相愛とは>
企業の理念でありミッションのもと、
雇われる側(社員)と雇う側(経営陣・管理職・上司)が、
互いに歩み寄り、協力しあい、信頼しあい、
「あなたに働いてほしい」「ここで働きたい」と 思い合っている関係。
そうした関係であればこそ、両者の間に信頼が生まれ、
働く人は充実感を持ち、納得して働ける。
結果、経営戦略が着実に実行に移され、
予定された収益確保に近づきやすくなる。
 
 
要するに、働く人は、皆、1人の「人」という点で同じなのです。
 
雇用形態に基づく理不尽な格差があったり、
昇進昇格等の天井が決まっていて、
その会社での成長が人事制度の構造上見込めなければ、
働く人は意欲を失い、
生産効率も落ちてしまうということなのだと思います。
 
 
もちろん、人はさまざまです。
 
 
「私はあくまで扶養の範囲で働きたい」
「気楽に働き、責任は負いたくない」といった希望を持つ
パートさんも多いです。
 
 
それでも、エフコープさんでは2000年代前半から
地道かつ継続的に同一労働同一賃金の取り組みを行い、
そこではパートさんに、
より主体的な働き方を求めることとなりましたが、
結果的に、増益・賃上げとう着実な成果を生み出されています。
 
 
一方、クレディセゾンさんの取り組みは、
今後の企業成長を目的とした「大改革」。
 
すなわち今後に向けた投資対象として
「全社員活躍」を選ばれました。
 
 
もちろん、2社の取り組みが、
すべての企業にフィットするわけでもないでしょう。
 
 
そもそもの賃金格差や仕事格差、
パートと正社員の人数比などによっても、
企業の持続的な成長のために採るべき、
具体的な施策は変わってくると思います。
 
 
でも。 自社でも「全社員活躍」ができたなら・・・
 
 
そんなにいいことはありませんよね。
 
といった目で、2社の取り組みについて、
自社になぞらえ、どう自社に生かせるか、
考えてみてはいかがでしょうか。
 

 

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